Chapter7:カプじいの裏切り

やめろ……

こっちへ来るんじゃねぇ!!







「かはーーーーっ!!」


ガバッと身を起こすと、俺はベッドで汗だくになっていた。


どうやら"悪い夢"を見ていたようだ……

ポケットタウンが『仮面をつけた侵略者』に襲われて火の海と化す、そんな感じの悪夢だった。

「くそっ、なんてひでぇ夢だったんだ……」


俺はフラフラと立ち上がり、窓を開けて外の空気を吸い込んだ

少しだけ外が明るく、冷たくて湿った風がひんやりしてて気持ちよかった。
いつものポケットタウンの朝だった。

「ぐふう……

こんな"平和な街"が襲われるとかありえないぜ」

俺はホッと胸を撫でおろし、よっこらとベッドから飛び降りた。


便所へ向かおうとした途中、

絨毯の真ん中に『一枚の紙』が置かれているのに気づいた

「何だこりゃ?」


ザツな字でこんな文章が書かれていた





ピチューへ。

ゴメン!せっかく泊めてもらえる事になったのに
ゼニガメたちに見つかっちゃってさ、帰る事になっちゃった!

僕が話した事、ちゃんと覚えてる?

もし《ウェイブタウン》に引っ越す気になったら、いつでもおいでよ!歓迎するからさ!

お菓子、美味しかったよ!


             サニーゴより






……だってよ。

最後にデフォルメ化された愛らしい"顔サイン"までついてるぜ。

「あいつ、実はやっぱ『女の子』なんじゃないか……?」


昨晩ここでサニーゴと過ごした思い出が蘇った

マセガキだったが、話してみると楽しい奴だったぜ。足は強烈に臭かったがな。チビすけの足ぐらいに。

「こうしちゃいられん

とっとと行動を起こすぜ!」

俺のハラはすでに決まっていた


この街を出ていくのは確かに辛いが、他に道は無い……

《シルヴァー学園》へ行くにはリザードンさんの支配するこの狭いポケットタウンを離れるしかない。
そう、ウェイブタウンの住民になる以外に方法はないんだ。
 
「行くしかねぇ……
サニーゴの待つウェイブタウンへ!」

だが待てよ。その前にどうしても

"確かめておかなくちゃならない事"があるんだったな。

便所でゴシゴシ歯を磨き終えた俺は玄関からハシゴを降り、

"ある場所"へ向かい、夜が明ける前の薄暗い道をひっそりと歩きだした




やがて、俺は一軒の家に辿りついた


俺のポストから『入学許可証』をぶんどり、

俺を絶望のどん底へと突き落とした憎たらしいヤツが住んでる家だった。

俺はゴクリと唾を飲んだ。


「何としても問いただしてやるぜ……

カプじいが、こんなふざけた事をした理由をよ!」

俺が思っている通りなら、俺は酷い"裏切り"に遭っていた事になる。

『恩人』だと思っていたカプじいの信じがたい裏切りだ。

何かの間違いであって欲しい……

カプじいが俺の『入学許可証』を奪い去ったなんて、俺の勘違いであって欲しい……

俺はそう祈りながら、おそるおそる扉に近づいた


「何だこの紙は?」


その時、ドアにデカデカと貼られていた"一枚の張り紙"に気づいた

俺はそれに書かれてる内容を見て絶句した。



ひょーほほい!

カプじいはしばらく旅に出ますぞ~!










なっ……


こんな時に旅に出るだとおおお!?



ば、ばかな……

一体何の冗談だこれは!?

確かにカプじいは《風のコケコ》と呼ばれるぐらい、

しょっちゅう放浪する癖はあったけどよ……よりによってこんな時にかよ!!





















おのれ……






















「さては、逃げやがったな!!

カプじいめ!!」

俺は全てを悟り、一気に怒りが込み上げた。


これでハッキリ分かったぜ……

やっぱり俺の『入学許可証』を奪い去ったのは、紛れも無くカプじいだったんだ!

「くそったれ!!

俺が《シルヴァー学園》に入学できなくなるように画策しやがって……」

カプじいが……

あの優しかったカプじいが……
俺を裏切り、罠に陥れようとしやがったんだ!!

何が『恩人』だ!!

俺の夢をぶっ潰そうとしやがるとは、とんでもねぇ腐れジジイだぜ!!

おまけにどっかへ"夜逃げ"までかましやがって……

これじゃあ、俺を棄て去ったロクデナシの両親と同じじゃねぇかよ!!

腐ってやがるぜ!カプ・コケコさんよ!!


アンタだけは俺の味方だと信じてたのに……完ペキに裏切られたぜ!!

ちくしょおおーーっ!!

「そっちがその気なら、

逆に何としてでも《シルヴァー学園》に行ってやる!!」

もうこの街に未練などあるかよ

こんなトコ、早々に出て行ってやるぜ!!

リザードンもカプじいも、全員くたばっちまいやがれ!!


俺は怒りと悲しみでいっぱいになり、

胸糞悪いこの場所から一刻も早く離れようと、大声でわめき散らしながら爆走した








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