カプ・テテフの力
ボクと姉さんは、お互いの「毛の感触」がたまらなく好き
寒い時はよく二人で体をこすり合わせて、ぽかぽか暖まったものさ。
その晩……ボクと姉さんの体はもっふもふ
ボクたちネコだから、
いつもフサフサの毛に包まれているんだけどさ。
その夜はいつにも増して、ボクたちの毛並みはなめらかだった。
あの後、ウルガモスさんとホテルについていったボクと姉さんは
2日ぶりにシャワーを浴びさせてもらった。
風呂上がりにボクと姉さんは「ドライヤー」にかけられると
毛がこんな風に、
ふんわりもっふもふになったという経緯さ。
ふんわふわのボクはいつもの服を着て、帽子をかぶり、
姉さんと一緒にウルガモスさんをたずねた。
ウルガモスさんはソファーに腰かけながら、優雅に紅茶を嗜んでいた。
「やあ、リフレッシュしたかね?」
ボクと姉さんは一緒に「はい」と返事した
久しぶりにゆっくりシャワーが浴びられて満足したし、
好意的なウルガモスさんの待遇に
ボクと姉さんは、感謝の気持ちでいっぱいだよ。
「メラルバ、そこにいたのか
客人に挨拶しなさい。」
ウルガモスさんは、ボクたちの後ろに向かって言った
振り返るとそこに幼い子供がいた
白い毛がふわふわしてる、幼虫の男の子がさ。
まだ6、7歳ぐらいだろうか?
ボクがじっくり見てるとその子はあたふたして、ソファーの後ろに隠れちゃった。
その子は顔をちょこっと出すと、
小さな声で「こ…こんばんは」と言ったような気がした
「キハハ、ワタクシの子メラルバだよ
とっても良い子なんだが……人見知りが激しくてね。」
ウルガモスさんが「おいで」と言うと
その子……メラルバ君はソファーにのぼり、彼の膝にちょこんと乗った。
片手にティーカップを持ちながらウルガモスさんは
もう片方の手で、メラルバ君をなでている
ボクはちょっぴり微笑ましくなった。
立ったままのボクと姉さんに、
ウルガモスさんは「かけなさい」とすすめてくれた。
けどさ……このソファー
ボクと姉さんには大きくて、足が床に届かないよ
しょうがないのでボクたちは
ソファーを汚さないように気をつけながら、
奥の方へと腰かけ、両足のさきをウルガモスさんに向けるようにして座った
向こうから見るときっと二体のぬいぐるみが
仲良くソファーの上にぽん、と並べられている風に見えたかもしれない。
ボクたちはさっそく「一番知りたいコト」をたずねた
「ウルガモスさんは……カプ・テテフというポケモンと
知り合いだと聞いています。」
ウルガモスさんは、紅茶を飲もうとしたのをぱっと止めた
持っていたティーカップを机に置くと
ボクたちの顔をじっくり見て「それをどこで?」と聞き返してきた
ボクと姉さんは顔を見合わせた後、
自分たちの身の上や、旅の理由について話した。
「なるほど。君たちは、魔法使いの一族か」
ウルガモスさんは納得した様につぶやいた
といってもさ……
ボクと姉さんはまだ半人前なんだけどね。
「カプ・テテフは」
彼が語りだすのを、ボクと姉さんは真剣に聞いた
「ワタクシの古くからの友人さ。変わったポケモンでね
彼女には不思議な力があるのだよ。」
不思議な力?
それに「彼女」って事は……カプ・テテフは女性?
「いかにも。彼女にはポケモンを癒す能力があるらしくてね
彼女の「りんぷん」に触れた者は、どんな病や傷も立ちどころに治ると聞く。」
「それに……」とウルガモスさんは続けた
「カプ・テテフに近づいたエスパーポケモンは「サイコパワー」が強化され、
能力が何倍にも上がるという話もある。」
ボクと姉さんはびっくりして、お互いの顔を見合わせた
エスパーポケモンの能力を何倍にも上げてくれる!?まさか……
そんな事が本当にできるっていうの?
「彼女ならできる。そういう力の持ち主なのさ」
ウルガモスさんはトプトプと、カップに紅茶を注いだ。
「だが……それを知った大昔のポケモンたちは、彼女をしつこく狙い続けた。
そのせいで今やカプ・テテフはすっかり「ポケモン不信」になり……
誰も知らないどこぞの秘境に、隠れ暮らすようになったのだ。」
今となっては彼女の居場所を知るのは「一部の友人」だけだと
ウルガモスさんはそう語った。
だからカプ・テテフは、みんなから「幻の存在」と言われるようになっていったんだ
「けどさ……ウルガモスさんは知ってる。
そうなんでしょ?」
ボクが問いかけると、彼はキハハッと笑った
「もちろん知っているさ。
ワタクシと彼女は200年も前から友人だからね。」
に、二百年!?
ボクと姉さんは思わずたじろいだ
ウルガモスさんは……そんな昔から生きているの?
どうやれば、それだけ長生きできるのさ!?
そんなに生きられるのはせいぜい
「伝説のポケモン」ぐらいだとマシェード叔母さんも言ってたのにさ!
「おっと、これはつい口を滑らせてしまったね。
今のは極秘事項だ。忘れてくれたまえ……キッハハハ」
えェーー!?
わ、忘れろって……言われてもさ!
「さて。恐らく君たちは、カプ・テテフの居場所について知りたいと思っているだろう?
だがね……それはできない相談だよ。」
ボクは困惑した
「なぜなのさ!?どうして?」
思わず声を荒げたボクに、ウルガモスさんは冷静に答えた。
「彼女、カプ・テテフはね。他者と関わるのに疲れきっている
その能力ゆえに……
さんざん狙われてきたのだから仕方のない事だ。」
「今の君たちみたいにね」とも付け足した
「どうか理解してくれたまえ……
静かに暮らしている彼女を、どうかそっとしておいて欲しい
彼女の平穏が乱されるような事はワタクシも、友人として決して望まないのだ。」
そんな……
ボクと姉さんは、何もその力が目当てじゃないのに
ただカプ・テテフに会えば、
ボクたちの「両親」について何か分かるかもしれないから
そう思っているから探しているだけなのにさ……
「お願いです、ウルガモスさん!
ボクたち悪さしません!
だから教えて下さい……カプ・テテフのいる場所を!」
ボクと姉さんは必死に頼んだけど
ウルガモスさんは、首を縦に振ってはくれない
ボクと姉さんは、しょげた顔してお互いを見合った。
やっとカプ・テテフについての手がかりを見つけたのに
居場所を教えてくれないなんて……
ボクは悔しい思いで、涙が出そうになり
こぶしをぎゅっと握りしめた
「ねえ」
しばらく沈黙が流れた後、ふと小さな声がした
ボクは顔を上げ、声の主をたどった
メラルバ君だった
「パパ、このお兄ちゃんとお姉ちゃんに教えてあげてよ
テテフちゃんのいる場所のこと。」
テ……テテフちゃん??
ボクと姉さんは何のことか分からず、困惑した
「この二人はきっと、パパとママに会いたいだけだよ……
ボク……その気持ち分かるからさ。」
「お願いだよパパ」とメラルバ君は父親を見上げながら、
小さな身体で一生懸命
ボクたちのために訴えてくれた……
するとウルガモスさんはククッと笑った
「やあ、許してくれたまえ。君たちのリアクションがどうしても見たくてね
ついつい「意地悪」をしたのさ。本当にすまない」
ボクは意味が分からなくて、きょとんとした
「もちろん教えるさ。カプ・テテフの居場所……
彼女ならアーカラカラ山にいるよ。」
アーカラカラ山!?
ボクと姉さんはソファーから飛び上がった
「西の島々にある火山さ。
カプ・テテフは今そこに独りで住んでいる。彼女に会いたければ訪ねるといい」
ど、どうして急に?
ボクは嬉しいのと同時に、わけが分からなくなった
「だから言っただろう。「意地悪」をしたと
ワタクシはね、最初からカプ・テテフの居場所について
教えるつもりだったのさ。」
最初から……!?
え?じゃあボクたち……からかわれていたの?
「もっとも、この子には見抜かれていた様だけどね。」
ウルガモスさんは笑って、メラルバ君をなでた
メラルバ君もニコニコしている
そんな……ボクたち真剣なのにひどいよぉ~!
「君たちの切実な思いは十分に伝わった
きっとカプ・テテフも……君たちになら会ってくれると思う」
ウルガモスさんは優しく微笑んだ
「ワタクシは、子供が大好きでね。
頑張っているところを見ると、
ついつい応援したくなってしまうのだよ。みんなのヒーローになりたいのさ」
ボクと姉さんは最初あっけにとられていたけど、
だんだんと喜びがわき上がって、満面の笑顔でお互いを見合った
そして、ウルガモスさんとメラルバ君にお礼を言った
ついに分かったカプ・テテフの居場所……
ボクと姉さんの旅の「終着点」がその時、はっきりと見えたような気がした
真っ赤な溶岩が、ボコッと音を立てて跳ねると
それはボクの身体にかかった
「あちちちち!!助けてよぉ~姉さん」
服が燃え出して、ボクはたまらず転げ回った
そんなボクを見て姉さんはすぐに
魔法の「水」を使って、ボクの服を消火してくれた
「大丈夫ですか!?」
な……なんとかね
ちょっぴり毛がコゲちゃったけどさ……
姉さんは涙を浮かべるボクに、手を差し伸べてくれた
「後もう少しです。頑張りましょう!」
ボクは服についたススをぽんぽん払い
ずれている帽子を戻しながら、そっとその手をつかんだ
ウルガモスさんと別れた後
ボクと姉さんは「カプ・テテフ」に会いに、ここアーカラカラ山へやってきた。
活火山だけあって、そこら中に「香ばしい匂い」がたちこめていて
ときどきむせちゃいそうだ。
あちこちひび割れた黒い地面の下で
真っ赤な溶岩がぐつぐつ煮えたぎっているのが見える
もしも歩く場所を間違えれば、たちまち足を溶岩の中に突っ込んで大やけどさ。
あまりの暑さで、ボクも姉さんも汗びっしょりになっていた。
それでもボクたちは一歩一歩
足を踏み外さないよう、気をつけながら慎重に登った
ウルガモスさんの話だと「カプ・テテフ」は
山のてっぺんあたりに住んでいるらしいんだけど……
ボクだったら絶対にゴメンだよ、こんな活火山に住もうだなんてさ!
もう少しで黒コゲになりかけたしね。
途中、何度か誤って「柔らかい地面」を踏んじゃいそうになったけど
そのたびに姉さんが助けてくれた
何とか頂上へ辿りついたけど、ボクと姉さんは汗だくでくたくただった。
「ちょっと休もうよ」
ボクは座り込んでクッキーをむしゃむしゃ食べた。
姉さんもつられてボクの隣に座り、ビスケットを取り出して口いっぱいに頬張った。
しばらく休んだ後、ボクと姉さんは噴火口へ近づいて
下をのぞき込んでみた。
噴火口はだいぶ深く、ずっと下の方に「真っ赤な湖」があって
そこから蒸気が立ち昇っている
ボクはごくりと息をのんだ……もしも、万が一だけどさ
あそこに落ちたらいっかんの終わりだよ
ボクは首をぶんぶん振り、頭の中の「悪いイメージ」を払いのけようとした
それにしても、カプ・テテフはどこにいるんだろう?
ボクと姉さんは周囲を見渡しながら「カプ・テテフさん!」と呼んだけど、返事はなかった。
姉さんは疲れてるせいか、とっても苛立っている様子だ
そのとき突然、姉さんの足もとがガタリと崩れ
姉さんはバランスを崩した。
「姉さん!!」
ボクは思わずその腕をつかみ
ぐるりと姉さんを引っ張って、落ちるのを防いだ
だけど代わりにボクは……ふわりと宙に放り出されてしまった
下は噴火口……
遥か底で煮えたぎっている「真っ赤な湖」が
ボクを飲み込もうと、大きく口を開いているのが見えた
ボクは涙でいっぱいになり、目をつぶった
「もうダメ。」そう覚悟していたとき
落下が止まって、宙ぶらりんになるのを感じた
目を開けて上を見ると、姉さんが崖から身を乗り出して
ボクが落ちないよう支えてくれていた!
「ね……姉さん!!」
歯を食いしばり、ボクを噴火口から引き上げようとする姉さんを見て
ボクは叫んだ
はっきり見えたからだ
その足もとがガタガタと「悲鳴」を上げている事に……
このままじゃ二人とも下へ真っ逆さまだ……
あぁ神様、お願いです……
どうかこの窮地から救って下さい……
ボクはもうどうなっても構わないから姉さんを助けて下さい……
どうか……姉さんだけは……
これまで姉さんと過ごした思い出が走馬灯のように蘇り
ボクは胸が苦しくなった。
ボクは……意識が遠のいていった
そのときうっすらと
「ピンクの影」が見えたような気がした……
……
気が付くとボクは……どこかで横たわっていた
ここは……天国?それとも……
ボクはぱっちりと目を醒ました。
周りを見渡すと、自分がどこかの部屋にいるのだと分かった
ボクは服をぜんぶ脱がされて、すっぽんぽんでベッドに寝かされていた
隣を見ると、姉さんが横たわっていた
ボクは「姉さん!」と必死に呼びかけながら
その体を何度もゆすった
姉さんは目を醒ますと、ゆっくりと起き上がった
よかった……助かったんだ……
ボクと姉さんは手をつないで、お互いの無事を喜び合った
「アローラ~!」
突然ピンクの物体が飛び出し
ボクと姉さんは「わぁっ!」と声をあげた
おかしな模様が描かれたピンクの「何か」は
二本の触角をぴくぴくさせながら、ボクたちの目の前に浮いていた
よく見ると後ろの方に「蝶々の羽」のような突起がついている
「これ……ポケモンなのかなぁ?」
ボクはもっとよく顔を近づけて、それを観察しようとした
すると物体の頭がカパッと開いた
「失礼ね。ちゃんとポケモンよ!」
中から「女の子」が出てきて、ボクはびっくりした
その子は最初ぷんぷん怒ってたけど
すぐニコニコして、両手を口元にあてて楽しそうに笑った
「はじめまして!私がカプ・テテフよ
キミたち私に会いに来たんでしょ?でしょ?ウルガモスさんから聞いてるわー」
女の子はめちゃめちゃ早口で喋りだした
ちょ、ちょっと待ってよ!
そんなに早口だと、何言ってるのかわかんないよ
「でさー!私のことは「テテフちゃん」って呼んでくれると嬉しいなー♪
あはははー♪」
その子は嬉しくてたまらないといった感じで
部屋をビュンビュンと飛び回った
ボクと姉さんは口をあんぐりさせながら見ていた
その後、落ち着いたボクたちはベッドの上でその子とお喋りした
どうやらこの子が「カプ・テテフ」なんだってさ。
あまりにもボクが想像していたのとは違っていたから
正直言って、最初は信じられなかったけど
確かに他のポケモンとは違う……なんだか不思議な感じがする。
彼女はウルガモスさんから、ボクと姉さんを助けるように頼まれていて
ずっとボクたちを待ってたんだって。
「でもー!ビックリしちゃった
キミたちを見つけたとき、火口に落ちそうになっててさー。私飛び出して助けちゃった!
元気いっぱいなのは分かるけど、もう命を粗末にしちゃダメだからね!」
あいかわらずの早口……
けど……これで分かった
あの時ちらっと見えた「ピンクの影」は、やっぱりテテフちゃんだったんだ
彼女が助けてくれたおかげで、ボクと姉さんはこうして生きている。
ボクたちはテテフちゃんに深々とお礼を言った
「いいって♪いいって♪
私ポケモンを助けるのが趣味なの。昔はそれで「女神さま」なんて呼ばれたぐらい!
でも今は疲れて、廃業しちゃったけどね。あはははー♪」
テテフちゃんは楽しそうに笑った
「あ、そうだ。
サイコパワー上げてあげよっか?」
ボクは軽っ!と思いつつ「はい」と答えた
いつも楽しそうに笑っていたり、唐突にサイコパワーの話になったり
テテフちゃんって、何だか掴みどころのないポケモンだなぁ
ウルガモスさんが言うには、その力は本物らしいんだけどさ……
「じゃあサイコメイカー発動するから、じっとしててね♪」
テテフちゃんは目を閉じて
祈るようなポーズをとった後、両手をパーッと開いた
次の瞬間、部屋の中が「不思議な感じ」になった
ボクは不思議な感覚にとまどった
なんだろう?この気持ち……
ボクの「サイコパワー」が目覚めていく
姉さんもやっぱり、同じような感覚を味わっているみたい。
えも言えない心地よさにボクと姉さんは、「小さな宇宙」に包まれてるような気がした。
「さ。終わったよ♪」
テテフさんがそう言うと、部屋から「不思議な感じ」は消えた
え……もうおしまい?
あまりにもあっさりだったから、ボクと姉さんは拍子抜けした
もっとこう「厳しい試練」みたいなのをやらされるかと、身構えてたのにさ!
だけど……ボクの中で確かに「何か」が
目覚めたような気はしている。
ボクは本能のままに、折りたたんでいた耳を開いた
すると「眼」がぱっと見開いて、ものすごいパワーが溢れだした
「これが本当に……ボク?」
ボクは自分のサイコパワーの高まりに驚いた
姉さんもまた、ボクを見て「信じられない」という顔をしている
っ……
突然ボクは激しい頭痛に襲われた
これは何だろう?何かの「ビジョン」が見える……
二人のポケモン……
そして、二人を襲っている「黒いドラゴン」の姿……
二人のポケモンは、ボクと姉さんの「両親」だとボクはすぐに理解した
ポケッ島……黒い……影……X……
マー……シャ………ド………
途切れ途切れに、頭の中でそんな「コトバ」が浮かんだ
ボクは必死にその「コトバ」の意味を探ろうとしたけど
うまく聞き取れなかった……
結局、よく分からないまま「ビジョン」は終わってしまった
「ビジョン」が終わると、ボクは目まいがして倒れそうになった
姉さんは慌ててボクを支え
不安そうに「大丈夫?」ってきいてきた
「うん……ボクは平気。」
ボクは姉さんを心配させまいと、冷静を装った
何だったんだろう?今のは一体……
「あ!視えたんだ、過去のイメージが。」
テテフちゃんはボクに言った
過去のイメージ……って一体何なのさ!?
「サイコパワーが高まるとねー!
ときどき「過去や未来」が視えたりするんだってさー♪私もたまにそういうコトあるんだけど!
それってつまり、キミがエスパーポケモンとして成長したっていう証拠だヨ!」
エスパーポケモンとして成長した?
ボクが……
嬉しいのと同時に、なんだか恐ろしくもあった
「まー、いきなりそんな物が視えたら不安だよねー!
何が視えたのかは知らないけどさ♪私にできるのはここまで。後はキミたちでガンバりなよー」
あははは♪と笑うテテフちゃん
その日、カプ・テテフに出逢ってボクと姉さんの「サイコパワー」は何倍もパワーアップした
ビジョンを通し、はじめて知った両親の姿……
そして「ポケッ島」という島の存在
それがマシェード叔母さんが言っていた「手がかり」だったのかどうかは分からないけど
こうしてボクと姉さんの、カプ・テテフを求める旅は終わった。
だけど……これで全てが終わった訳じゃない
ボクが視たあのビジョン……
そこではボクと姉さんの両親が、謎の「黒いドラゴン」に襲われていた
二人はその後……どうなってしまったんだろう?
全ての真相を握っているのは、あの「黒いドラゴン」であるとボクは確信した。
ドラゴンがボクたちの両親が襲っていた場所……ポケッ島
ボクと姉さんはアーカラカラ山を降りた後
「次なる目的地」をその島に決めて、再び旅立っていった。
……
あ、そうだ
テテフちゃんと別れる時、
一つだけ「どうしても気になる事」があって、ボクはたずねてみたんだ
「ねえ。テテフちゃんは何でわざわざ、こんな活火山に住んだりしてるの?」
「えー!だってその方がスリリングでしょ♪」 だってさ。
END
《上》へ
ボクと姉さんは、お互いの「毛の感触」がたまらなく好き
寒い時はよく二人で体をこすり合わせて、ぽかぽか暖まったものさ。
その晩……ボクと姉さんの体はもっふもふ
ボクたちネコだから、
いつもフサフサの毛に包まれているんだけどさ。
その夜はいつにも増して、ボクたちの毛並みはなめらかだった。
あの後、ウルガモスさんとホテルについていったボクと姉さんは
2日ぶりにシャワーを浴びさせてもらった。
風呂上がりにボクと姉さんは「ドライヤー」にかけられると
毛がこんな風に、
ふんわりもっふもふになったという経緯さ。
ふんわふわのボクはいつもの服を着て、帽子をかぶり、
姉さんと一緒にウルガモスさんをたずねた。
ウルガモスさんはソファーに腰かけながら、優雅に紅茶を嗜んでいた。
「やあ、リフレッシュしたかね?」
ボクと姉さんは一緒に「はい」と返事した
久しぶりにゆっくりシャワーが浴びられて満足したし、
好意的なウルガモスさんの待遇に
ボクと姉さんは、感謝の気持ちでいっぱいだよ。
「メラルバ、そこにいたのか
客人に挨拶しなさい。」
ウルガモスさんは、ボクたちの後ろに向かって言った
振り返るとそこに幼い子供がいた
白い毛がふわふわしてる、幼虫の男の子がさ。
まだ6、7歳ぐらいだろうか?
ボクがじっくり見てるとその子はあたふたして、ソファーの後ろに隠れちゃった。
その子は顔をちょこっと出すと、
小さな声で「こ…こんばんは」と言ったような気がした
「キハハ、ワタクシの子メラルバだよ
とっても良い子なんだが……人見知りが激しくてね。」
ウルガモスさんが「おいで」と言うと
その子……メラルバ君はソファーにのぼり、彼の膝にちょこんと乗った。
片手にティーカップを持ちながらウルガモスさんは
もう片方の手で、メラルバ君をなでている
ボクはちょっぴり微笑ましくなった。
立ったままのボクと姉さんに、
ウルガモスさんは「かけなさい」とすすめてくれた。
けどさ……このソファー
ボクと姉さんには大きくて、足が床に届かないよ
しょうがないのでボクたちは
ソファーを汚さないように気をつけながら、
奥の方へと腰かけ、両足のさきをウルガモスさんに向けるようにして座った
向こうから見るときっと二体のぬいぐるみが
仲良くソファーの上にぽん、と並べられている風に見えたかもしれない。
ボクたちはさっそく「一番知りたいコト」をたずねた
「ウルガモスさんは……カプ・テテフというポケモンと
知り合いだと聞いています。」
ウルガモスさんは、紅茶を飲もうとしたのをぱっと止めた
持っていたティーカップを机に置くと
ボクたちの顔をじっくり見て「それをどこで?」と聞き返してきた
ボクと姉さんは顔を見合わせた後、
自分たちの身の上や、旅の理由について話した。
「なるほど。君たちは、魔法使いの一族か」
ウルガモスさんは納得した様につぶやいた
といってもさ……
ボクと姉さんはまだ半人前なんだけどね。
「カプ・テテフは」
彼が語りだすのを、ボクと姉さんは真剣に聞いた
「ワタクシの古くからの友人さ。変わったポケモンでね
彼女には不思議な力があるのだよ。」
不思議な力?
それに「彼女」って事は……カプ・テテフは女性?
「いかにも。彼女にはポケモンを癒す能力があるらしくてね
彼女の「りんぷん」に触れた者は、どんな病や傷も立ちどころに治ると聞く。」
「それに……」とウルガモスさんは続けた
「カプ・テテフに近づいたエスパーポケモンは「サイコパワー」が強化され、
能力が何倍にも上がるという話もある。」
ボクと姉さんはびっくりして、お互いの顔を見合わせた
エスパーポケモンの能力を何倍にも上げてくれる!?まさか……
そんな事が本当にできるっていうの?
「彼女ならできる。そういう力の持ち主なのさ」
ウルガモスさんはトプトプと、カップに紅茶を注いだ。
「だが……それを知った大昔のポケモンたちは、彼女をしつこく狙い続けた。
そのせいで今やカプ・テテフはすっかり「ポケモン不信」になり……
誰も知らないどこぞの秘境に、隠れ暮らすようになったのだ。」
今となっては彼女の居場所を知るのは「一部の友人」だけだと
ウルガモスさんはそう語った。
だからカプ・テテフは、みんなから「幻の存在」と言われるようになっていったんだ
「けどさ……ウルガモスさんは知ってる。
そうなんでしょ?」
ボクが問いかけると、彼はキハハッと笑った
「もちろん知っているさ。
ワタクシと彼女は200年も前から友人だからね。」
に、二百年!?
ボクと姉さんは思わずたじろいだ
ウルガモスさんは……そんな昔から生きているの?
どうやれば、それだけ長生きできるのさ!?
そんなに生きられるのはせいぜい
「伝説のポケモン」ぐらいだとマシェード叔母さんも言ってたのにさ!
「おっと、これはつい口を滑らせてしまったね。
今のは極秘事項だ。忘れてくれたまえ……キッハハハ」
えェーー!?
わ、忘れろって……言われてもさ!
「さて。恐らく君たちは、カプ・テテフの居場所について知りたいと思っているだろう?
だがね……それはできない相談だよ。」
ボクは困惑した
「なぜなのさ!?どうして?」
思わず声を荒げたボクに、ウルガモスさんは冷静に答えた。
「彼女、カプ・テテフはね。他者と関わるのに疲れきっている
その能力ゆえに……
さんざん狙われてきたのだから仕方のない事だ。」
「今の君たちみたいにね」とも付け足した
「どうか理解してくれたまえ……
静かに暮らしている彼女を、どうかそっとしておいて欲しい
彼女の平穏が乱されるような事はワタクシも、友人として決して望まないのだ。」
そんな……
ボクと姉さんは、何もその力が目当てじゃないのに
ただカプ・テテフに会えば、
ボクたちの「両親」について何か分かるかもしれないから
そう思っているから探しているだけなのにさ……
「お願いです、ウルガモスさん!
ボクたち悪さしません!
だから教えて下さい……カプ・テテフのいる場所を!」
ボクと姉さんは必死に頼んだけど
ウルガモスさんは、首を縦に振ってはくれない
ボクと姉さんは、しょげた顔してお互いを見合った。
やっとカプ・テテフについての手がかりを見つけたのに
居場所を教えてくれないなんて……
ボクは悔しい思いで、涙が出そうになり
こぶしをぎゅっと握りしめた
「ねえ」
しばらく沈黙が流れた後、ふと小さな声がした
ボクは顔を上げ、声の主をたどった
メラルバ君だった
「パパ、このお兄ちゃんとお姉ちゃんに教えてあげてよ
テテフちゃんのいる場所のこと。」
テ……テテフちゃん??
ボクと姉さんは何のことか分からず、困惑した
「この二人はきっと、パパとママに会いたいだけだよ……
ボク……その気持ち分かるからさ。」
「お願いだよパパ」とメラルバ君は父親を見上げながら、
小さな身体で一生懸命
ボクたちのために訴えてくれた……
するとウルガモスさんはククッと笑った
「やあ、許してくれたまえ。君たちのリアクションがどうしても見たくてね
ついつい「意地悪」をしたのさ。本当にすまない」
ボクは意味が分からなくて、きょとんとした
「もちろん教えるさ。カプ・テテフの居場所……
彼女ならアーカラカラ山にいるよ。」
アーカラカラ山!?
ボクと姉さんはソファーから飛び上がった
「西の島々にある火山さ。
カプ・テテフは今そこに独りで住んでいる。彼女に会いたければ訪ねるといい」
ど、どうして急に?
ボクは嬉しいのと同時に、わけが分からなくなった
「だから言っただろう。「意地悪」をしたと
ワタクシはね、最初からカプ・テテフの居場所について
教えるつもりだったのさ。」
最初から……!?
え?じゃあボクたち……からかわれていたの?
「もっとも、この子には見抜かれていた様だけどね。」
ウルガモスさんは笑って、メラルバ君をなでた
メラルバ君もニコニコしている
そんな……ボクたち真剣なのにひどいよぉ~!
「君たちの切実な思いは十分に伝わった
きっとカプ・テテフも……君たちになら会ってくれると思う」
ウルガモスさんは優しく微笑んだ
「ワタクシは、子供が大好きでね。
頑張っているところを見ると、
ついつい応援したくなってしまうのだよ。みんなのヒーローになりたいのさ」
ボクと姉さんは最初あっけにとられていたけど、
だんだんと喜びがわき上がって、満面の笑顔でお互いを見合った
そして、ウルガモスさんとメラルバ君にお礼を言った
ついに分かったカプ・テテフの居場所……
ボクと姉さんの旅の「終着点」がその時、はっきりと見えたような気がした
アーカラカラ山のカプ・テテフ
真っ赤な溶岩が、ボコッと音を立てて跳ねると
それはボクの身体にかかった
「あちちちち!!助けてよぉ~姉さん」
服が燃え出して、ボクはたまらず転げ回った
そんなボクを見て姉さんはすぐに
魔法の「水」を使って、ボクの服を消火してくれた
「大丈夫ですか!?」
な……なんとかね
ちょっぴり毛がコゲちゃったけどさ……
姉さんは涙を浮かべるボクに、手を差し伸べてくれた
「後もう少しです。頑張りましょう!」
ボクは服についたススをぽんぽん払い
ずれている帽子を戻しながら、そっとその手をつかんだ
ウルガモスさんと別れた後
ボクと姉さんは「カプ・テテフ」に会いに、ここアーカラカラ山へやってきた。
活火山だけあって、そこら中に「香ばしい匂い」がたちこめていて
ときどきむせちゃいそうだ。
あちこちひび割れた黒い地面の下で
真っ赤な溶岩がぐつぐつ煮えたぎっているのが見える
もしも歩く場所を間違えれば、たちまち足を溶岩の中に突っ込んで大やけどさ。
あまりの暑さで、ボクも姉さんも汗びっしょりになっていた。
それでもボクたちは一歩一歩
足を踏み外さないよう、気をつけながら慎重に登った
ウルガモスさんの話だと「カプ・テテフ」は
山のてっぺんあたりに住んでいるらしいんだけど……
ボクだったら絶対にゴメンだよ、こんな活火山に住もうだなんてさ!
もう少しで黒コゲになりかけたしね。
途中、何度か誤って「柔らかい地面」を踏んじゃいそうになったけど
そのたびに姉さんが助けてくれた
何とか頂上へ辿りついたけど、ボクと姉さんは汗だくでくたくただった。
「ちょっと休もうよ」
ボクは座り込んでクッキーをむしゃむしゃ食べた。
姉さんもつられてボクの隣に座り、ビスケットを取り出して口いっぱいに頬張った。
しばらく休んだ後、ボクと姉さんは噴火口へ近づいて
下をのぞき込んでみた。
噴火口はだいぶ深く、ずっと下の方に「真っ赤な湖」があって
そこから蒸気が立ち昇っている
ボクはごくりと息をのんだ……もしも、万が一だけどさ
あそこに落ちたらいっかんの終わりだよ
ボクは首をぶんぶん振り、頭の中の「悪いイメージ」を払いのけようとした
それにしても、カプ・テテフはどこにいるんだろう?
ボクと姉さんは周囲を見渡しながら「カプ・テテフさん!」と呼んだけど、返事はなかった。
姉さんは疲れてるせいか、とっても苛立っている様子だ
そのとき突然、姉さんの足もとがガタリと崩れ
姉さんはバランスを崩した。
「姉さん!!」
ボクは思わずその腕をつかみ
ぐるりと姉さんを引っ張って、落ちるのを防いだ
だけど代わりにボクは……ふわりと宙に放り出されてしまった
下は噴火口……
遥か底で煮えたぎっている「真っ赤な湖」が
ボクを飲み込もうと、大きく口を開いているのが見えた
ボクは涙でいっぱいになり、目をつぶった
「もうダメ。」そう覚悟していたとき
落下が止まって、宙ぶらりんになるのを感じた
目を開けて上を見ると、姉さんが崖から身を乗り出して
ボクが落ちないよう支えてくれていた!
「ね……姉さん!!」
歯を食いしばり、ボクを噴火口から引き上げようとする姉さんを見て
ボクは叫んだ
はっきり見えたからだ
その足もとがガタガタと「悲鳴」を上げている事に……
このままじゃ二人とも下へ真っ逆さまだ……
あぁ神様、お願いです……
どうかこの窮地から救って下さい……
ボクはもうどうなっても構わないから姉さんを助けて下さい……
どうか……姉さんだけは……
これまで姉さんと過ごした思い出が走馬灯のように蘇り
ボクは胸が苦しくなった。
ボクは……意識が遠のいていった
そのときうっすらと
「ピンクの影」が見えたような気がした……
……
気が付くとボクは……どこかで横たわっていた
ここは……天国?それとも……
ボクはぱっちりと目を醒ました。
周りを見渡すと、自分がどこかの部屋にいるのだと分かった
ボクは服をぜんぶ脱がされて、すっぽんぽんでベッドに寝かされていた
隣を見ると、姉さんが横たわっていた
ボクは「姉さん!」と必死に呼びかけながら
その体を何度もゆすった
姉さんは目を醒ますと、ゆっくりと起き上がった
よかった……助かったんだ……
ボクと姉さんは手をつないで、お互いの無事を喜び合った
「アローラ~!」
突然ピンクの物体が飛び出し
ボクと姉さんは「わぁっ!」と声をあげた
おかしな模様が描かれたピンクの「何か」は
二本の触角をぴくぴくさせながら、ボクたちの目の前に浮いていた
よく見ると後ろの方に「蝶々の羽」のような突起がついている
「これ……ポケモンなのかなぁ?」
ボクはもっとよく顔を近づけて、それを観察しようとした
すると物体の頭がカパッと開いた
「失礼ね。ちゃんとポケモンよ!」
中から「女の子」が出てきて、ボクはびっくりした
その子は最初ぷんぷん怒ってたけど
すぐニコニコして、両手を口元にあてて楽しそうに笑った
「はじめまして!私がカプ・テテフよ
キミたち私に会いに来たんでしょ?でしょ?ウルガモスさんから聞いてるわー」
女の子はめちゃめちゃ早口で喋りだした
ちょ、ちょっと待ってよ!
そんなに早口だと、何言ってるのかわかんないよ
「でさー!私のことは「テテフちゃん」って呼んでくれると嬉しいなー♪
あはははー♪」
その子は嬉しくてたまらないといった感じで
部屋をビュンビュンと飛び回った
ボクと姉さんは口をあんぐりさせながら見ていた
その後、落ち着いたボクたちはベッドの上でその子とお喋りした
どうやらこの子が「カプ・テテフ」なんだってさ。
あまりにもボクが想像していたのとは違っていたから
正直言って、最初は信じられなかったけど
確かに他のポケモンとは違う……なんだか不思議な感じがする。
彼女はウルガモスさんから、ボクと姉さんを助けるように頼まれていて
ずっとボクたちを待ってたんだって。
「でもー!ビックリしちゃった
キミたちを見つけたとき、火口に落ちそうになっててさー。私飛び出して助けちゃった!
元気いっぱいなのは分かるけど、もう命を粗末にしちゃダメだからね!」
あいかわらずの早口……
けど……これで分かった
あの時ちらっと見えた「ピンクの影」は、やっぱりテテフちゃんだったんだ
彼女が助けてくれたおかげで、ボクと姉さんはこうして生きている。
ボクたちはテテフちゃんに深々とお礼を言った
「いいって♪いいって♪
私ポケモンを助けるのが趣味なの。昔はそれで「女神さま」なんて呼ばれたぐらい!
でも今は疲れて、廃業しちゃったけどね。あはははー♪」
テテフちゃんは楽しそうに笑った
「あ、そうだ。
サイコパワー上げてあげよっか?」
ボクは軽っ!と思いつつ「はい」と答えた
いつも楽しそうに笑っていたり、唐突にサイコパワーの話になったり
テテフちゃんって、何だか掴みどころのないポケモンだなぁ
ウルガモスさんが言うには、その力は本物らしいんだけどさ……
「じゃあサイコメイカー発動するから、じっとしててね♪」
テテフちゃんは目を閉じて
祈るようなポーズをとった後、両手をパーッと開いた
次の瞬間、部屋の中が「不思議な感じ」になった
ボクは不思議な感覚にとまどった
なんだろう?この気持ち……
ボクの「サイコパワー」が目覚めていく
姉さんもやっぱり、同じような感覚を味わっているみたい。
えも言えない心地よさにボクと姉さんは、「小さな宇宙」に包まれてるような気がした。
「さ。終わったよ♪」
テテフさんがそう言うと、部屋から「不思議な感じ」は消えた
え……もうおしまい?
あまりにもあっさりだったから、ボクと姉さんは拍子抜けした
もっとこう「厳しい試練」みたいなのをやらされるかと、身構えてたのにさ!
だけど……ボクの中で確かに「何か」が
目覚めたような気はしている。
ボクは本能のままに、折りたたんでいた耳を開いた
すると「眼」がぱっと見開いて、ものすごいパワーが溢れだした
「これが本当に……ボク?」
ボクは自分のサイコパワーの高まりに驚いた
姉さんもまた、ボクを見て「信じられない」という顔をしている
っ……
突然ボクは激しい頭痛に襲われた
これは何だろう?何かの「ビジョン」が見える……
二人のポケモン……
そして、二人を襲っている「黒いドラゴン」の姿……
二人のポケモンは、ボクと姉さんの「両親」だとボクはすぐに理解した
ポケッ島……黒い……影……X……
マー……シャ………ド………
途切れ途切れに、頭の中でそんな「コトバ」が浮かんだ
ボクは必死にその「コトバ」の意味を探ろうとしたけど
うまく聞き取れなかった……
結局、よく分からないまま「ビジョン」は終わってしまった
「ビジョン」が終わると、ボクは目まいがして倒れそうになった
姉さんは慌ててボクを支え
不安そうに「大丈夫?」ってきいてきた
「うん……ボクは平気。」
ボクは姉さんを心配させまいと、冷静を装った
何だったんだろう?今のは一体……
「あ!視えたんだ、過去のイメージが。」
テテフちゃんはボクに言った
過去のイメージ……って一体何なのさ!?
「サイコパワーが高まるとねー!
ときどき「過去や未来」が視えたりするんだってさー♪私もたまにそういうコトあるんだけど!
それってつまり、キミがエスパーポケモンとして成長したっていう証拠だヨ!」
エスパーポケモンとして成長した?
ボクが……
嬉しいのと同時に、なんだか恐ろしくもあった
「まー、いきなりそんな物が視えたら不安だよねー!
何が視えたのかは知らないけどさ♪私にできるのはここまで。後はキミたちでガンバりなよー」
あははは♪と笑うテテフちゃん
その日、カプ・テテフに出逢ってボクと姉さんの「サイコパワー」は何倍もパワーアップした
ビジョンを通し、はじめて知った両親の姿……
そして「ポケッ島」という島の存在
それがマシェード叔母さんが言っていた「手がかり」だったのかどうかは分からないけど
こうしてボクと姉さんの、カプ・テテフを求める旅は終わった。
だけど……これで全てが終わった訳じゃない
ボクが視たあのビジョン……
そこではボクと姉さんの両親が、謎の「黒いドラゴン」に襲われていた
二人はその後……どうなってしまったんだろう?
全ての真相を握っているのは、あの「黒いドラゴン」であるとボクは確信した。
ドラゴンがボクたちの両親が襲っていた場所……ポケッ島
ボクと姉さんはアーカラカラ山を降りた後
「次なる目的地」をその島に決めて、再び旅立っていった。
……
あ、そうだ
テテフちゃんと別れる時、
一つだけ「どうしても気になる事」があって、ボクはたずねてみたんだ
「ねえ。テテフちゃんは何でわざわざ、こんな活火山に住んだりしてるの?」
「えー!だってその方がスリリングでしょ♪」 だってさ。
END
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